Ft.ヒロ先生 コラム

死にたいって、何があったの？

みなさんこんにちは、千里眼のFt.ヒロです。（Ftとは、Fortune-tellerの略）

さて、長年占いをしているといろいろなお客さんと出会うことになります。

何年か前のこと、目のまわりの化粧が黒くにじんで、パンダのようになった女の子が、わたしのところにやってきました。突拍子もないことを言うのだろうなと警戒した矢先、いきなりやってくれたのです。

「あ～、わたしもう、死にたーい！」と、爆弾を落とすような言葉から始まりました。

「えっ、死にたいって！どうしたの、いったい何があったの」と、驚いたわたしは身を乗り出して、その様子を窺います。何がそんなに死にたいのか、わたしにはさっぱり分からなかったのです。

すると、女の子は下を向いて、ポツリとこう言いました。

「携帯、トイレのなかに落としたの‥‥」

「えっ、‥‥‥？」

携帯がトイレの水に浸かってダメになってしまった。そのことが、死ぬほど辛いことなのか。わたしにはどうも理解できませんでした。

その後も心配になっていろいろ尋ねてみるのですが、ただ泣きじゃくるだけで何が言いたいのかよくわかりません。

「あのね。占いに来るよりも、携帯ショップへ行けば？わたしは占い師だから、携帯のこと、そんなに詳しくないし。ショップの人に相談すれば、ひょっとすると直るかもしれないし、ね！」

「違うの、違うんだから、いいの！」と言って、また泣き続けます。やれやれと、声にならないタメ息が出てきます。

しばらくすると泣き疲れたのか、少しずつしゃべるようになりました。

聞けば、この携帯はいつも肌身離さず持っていたといいます。そして、これがなければ生きていけないと、それこそ恋人以上の愛し方です。その大切な携帯が汚いトイレの水に浸かってしまった。このことがとても残念でならないようです。

うっかり手が滑ってポチャリ。その時はもう頭の中が真っ白になって、たまたま近くにあった占いの店に飛び込んで、無性に何か叫びたい気分になったというのです。まったく人騒がせな女の子ですが、しかし、たまにこういうこともあるのが占いなのです。

なぜなら、あなたのことを丸ごと受け入れる姿勢が占いにはあるからです。どんな辛いことがあっても、占い師はわたしのことをちゃんと分かってくれる。そんな安心感があるからこそ、人は占いに引きつけられるのです。

心のオアシスを求めてやってきた女の子。言葉を交わすうちに、その表情が変わっていきます。そして可愛い笑顔が戻ってきたら、そこで占いは終わりです。

メイクがグジャグジャになるまで泣き明かしたのですから、さぞかしスッキリしたことでしょう。来た時とはガラッと変わって、ニコニコ顔で帰って行きました。

占いとは、人と人とがとことん向き合って心を通い合わせる世界です。それだけに人間の意外な一面を数多く見ることになります。

占いの相談内容はどんなことでも構いません。今の自分を分かってほしい、今の自分の気分を変えてほしい、こんなことでもいいのです。占い師は、鋭い直観力と洞察力を傾けてあなたの心を癒し、実践的な生き方を明らかにしていきます。

次はあなたの番かもしれません。心を開いて人生を話してみませんか。

千里眼　Ft.ヒロ

投稿日：2016/05/01